■「縄文の巫女」


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■解説-土偶装飾付異型土器-


茨城県龍ヶ崎市羽原町出土
1個
土製
高33.0
縄文時代(中期)・前3000〜前2000年

  腰の位置で手を合わせるその姿から「縄文の巫女」の愛称で知られる縄文時代中期の土器である。人型を模した造形を指して土偶というが、本例は器状の部分が頭部と底部に複数存在することから土偶装飾付異型土器として分類される。縄文時代の中期以降に作られた土偶は破壊されて断片になった状態で出土するのが常であるが、通常意図的とみなされる破壊のあとは確認できないことも、本例の特異性と符号する。

頭部に冠のように付いた造形は冠角状突起と呼ばれる。縄文時代中期以降に顕在化した波状口縁を有し、その縁には粘土の貼り付けによる曲線状の隆線文とそこに施された箆状工具の連続的な平押文によって器面に文様が描かれている。本例は器面に一切の縄文が施されていないが、関東中期で隆盛を極めた勝坂式土器や阿玉台式土器にも同様に見られる特徴である。さらに、キラキラと一面に輝いて見えるのは粘土に意図的に混ぜられたと考えられる雲母末のためで、本例の立体的な装飾を鮮やかに際立たせている。
  「縄文の巫女」は、単なる個人の祈りの姿を表現したものではなく、集落内のすべての住人の願いを集約するためのものであったと考えるに十分な包容力を備え、時を越えてその根源的な祈りを現代の我々に伝えている。

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