■商売繁盛、招客万来、厄除開運を呼ぶという招き猫ですが、右手を上げたものはお金を招き、左手を上げたものはお客を招く、また黒い招き猫は魔除けの効果があるといわれています。■現在、招き猫は日本三大稲荷と呼ばれる豊川稲荷、伏見稲荷、皆中稲荷を始め、各地の稲荷神社の参道で縁起物として販売されているようです。稲荷神は五穀豊穣をもたらす神でありましたが、日本の産業構造の変化により、幸運、金運、さらには厄除けなどの性格を帯びるようになります。そんなときに、同等の性質を併せ持った招き猫が、するりと神社に顔を出し始めたのではないかと思います。 ■招き猫の発祥は江戸時代、元禄のころであるといわれています。もともと農家では猫は作物の守り神であり、特に養蚕地においては護符、魔除けとして猫絵が番室に張られるほどであったようです。■そういったある意味でキャラクターとして成立していた猫ですから、招き猫の発祥以前にその元となる猫の置物のようなものがあったのではないかと考えられます。
そして元来魔除けの性質しか持っていなかった猫が手を上げてお金やお客を招くようになった由来にはいくつか候補があり、書き出してみると、1.自性院の猫塚説:大田道灌が江古田ヶ原の戦で、黒猫に救われる 2.豪徳寺の猫塚説:井伊直孝が鷹狩の帰途、白猫に招かれて難を逃れる 3.西方寺の猫塚説:吉原の遊女薄雲太夫、愛猫に救われる 4.遊女屋の金猫銀猫説:2つの遊女屋が店先に大きな猫の置物を置いて張り合う とさまざまです。■しかし、どれも伝説であり物的証拠がなく、お寺に猫塚はあっても手を上げた形の招き猫そのものは存在していないの です。つまり、江戸時代にこれらの逸話をもとに招き猫を商品として世に送り出した人物がいたと考えられるのです。もしそうなら、その人物は商品価値のために「誰が作ったのか」をぼかして喧伝した可能性も高く、現在由来がつかみきれないのも仕方ないのかな、という気もするのです。